真空管アンプへの誤解の一つに、ノイズが多いというものがある。確かに、昔の真空管アンプは、現在のソリッドステートアンプと比べて、ノイズが目立つものがあったのは事実だと思う。でも、現代の良く出来た真空管アンプではそのような問題はまず無い。
方式によらず、ノイズの目立つアンプはダメなアンプだと、私は思う。一般的には、パワーアンプの残留雑音は、最低限、1mV(聴感補正無し)を切りたい。個人的には、100dBほどある高能率のアルテックでも大丈夫なようにする場合には、0.7mV以下が目標である。さらに、0.3mV以下になると、スピーカーからもっと微小な音もききわけられるようになるので、欲を言えば0.3mV以下にしたい。
私の作った300BPPアンプはWE300B復刻版を実装した状態で、残留雑音は0.14mV。アルテック604-8Gに繋いで、スピーカーに耳を付けてもノイズは出ない。
タンノイ ウエストミンスターには、Cello Encore Power Monoというソリッドステートアンプが繋がれているが、このアンプよりノイズは少ない。Cello Encore Power Monoだと、ツイーターに耳を近づけるとかすかにシャーという音が聴こえるが、私の作った300BPPアンプだとほぼ無音である。
あと、残留雑音のノイズの質も問題になる。私が、電源部にも高価なフィルムコンデンサを使うことが多いのは、フィルムコンデンサの方が長寿命であるということもあるが、同じ容量であっても電解コンデンサだとシャーと耳に付くノイズになることが多いのに、フィルムコンデンサの場合には、スーッという感じで耳に優しいノイズになるから。聴感上のノイズの質が良いのである。
現在製作しているSV-811-3シングルアンプは、残留雑音では1mVを切るのがやっとだろうと思う。フィラメントが、6.3V/4Aと大きいからだ。三栄無線のキットの845シングルアンプを手放してしまった理由の一つが残留雑音の多さ。1.5mV位だった。211や845は10V/3.25A。残留雑音は1mV程度にするのがやっとで、0.3mV以下にするのは難しい。