2013年05月

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  6080          6N6P          6CC41
6080は、philips ECGの1980年代製造のもの。米国軍用である。当時まだ冷戦が終結していなかったので、最新鋭の兵器のバックアップとして、旧型の真空管式の機材もスタンバイしていた。その保守用のものが当時大量に製造された。それが今も残っていて、オーディオアンプには使い難いので《猫またぎ球》として叩き売られている。
 
6N6Pは、旧ソ連の軍用球。私の手持ちは1960年代製造の年代物だが、それでも¥500くらいと格安だった。現在も、¥1000以下でも購入できる。この球は、真空管全盛時代にオーディオアンプの強力なドライバー管として良く使われた12BH7よりはるかに強力な真空管で内部抵抗が低く、6080の深いバイアスを振り切るドライバー管として好適。
 
6CC41は、レーダー装置に使われた球で、12AX7とほぼ特性が同じであるが6.3Vでしかヒーターを点火できない。ハンガリー/テスラ製でピン接続は6DJ8などと同じで、9番ピンが両極間のシールドに接続されている。ロシア/ソ連にも同等管があって、6N2Pという名前であり、ネットオークションで@¥380で出品されている。もちろん、12AX7でも良いのだが安いものでも¥1000以上するので、¥500の出力管を使ったアンプであるし今回は使わない。
 

前回、自作のために真空管を買う人は少なく、むしろ、完成品の真空管アンプの球を交換して音質の変化を楽しみたいとか、保守用の真空管を求める人が圧倒的に多いということを書いた
 
しかし、真空管全盛時代に製造された真空管でも、市販アンプに採用されない真空管の中に、ものすごく安くてお買い得なものがある。市場に大量に残っておれば、完成品メーカーやキットメーカーが採用したり出来るのだが、そこまで大量の数ではなく、かといって物凄く希少というわけでもないものは、格安で叩き売られているものがある。その中には、お宝があるのだ。安価で買える物から宝を選り分けて買い、それらを活用するのも自作ならでは。
 
そもそも、こういう真空管はメーカーが採用したりするのは無理。保守の事を考えたら、現在でも製造されているか、市場に多量の在庫がある品種を使ってでしか製品化は無理だからだ。だから、現行のメーカー製のアンプに採用される真空管の銘柄は限定される。特に、長期にわたってアフターフォローしようとする真面目なメーカーは、入手しやすく現行生産されている真空管のみ採用する傾向があるので、そういった真空管のNOSはとても高価で、もはやべらぼうと言っても良い。
 
具体的には出力管ならKT88EL34/6CA7300Bなど、前段用なら12AX7/ECC8312AU7/ECC826267/EF86、整流管だと5AR4/GZ34GZ325U4Gなどは高価になった。
 
自作派なら、こういったNOS球は避けたい。明らかに割高だからだ。逆にほとんど注目されない割安なNOS球を使って、自分で考えて世界で1組しかないアンプを造るのが良いのではないかと思うのである。
 
15KY8ACSPPアンプ
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6AR6CSPPアンプ
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6CW5なんちゃってQUAD2型アンプ
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EL5/3754689QUAD2型アンプ
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そして現在計画が進行中の6080全段差動アンプもそうである。

残念ながら、真空管アンプを自作する人は減少しているように思う。真空管アンプを自作する人の多くは、ラジオ少年だった。鉱石ラジオやゲルマニウムラジオに始まり、ラジオのキットを製作したり、初歩のラジオに掲載されていた実体配線図付きの記事を参考にラジオやアンプを造ることが始まりだった。
 
多くの人達は団塊の世代以上であり、アンプ製作をもリタイアしてしまった人も居る。ちなみに、私は50歳代前半である。10年位前に一度だけ毎年秋葉原の損保会館で行われている「真空管オーディオフェア」へ行ったことがあるが、来ていた人達はほとんどが私より年上の方であった。
 
秋葉原の真空管専門店に行くと、自作のために真空管を買う人は少なく、むしろ、完成品の真空管アンプの球を交換して音質の変化を楽しみたいとか、保守用の真空管を求める人が圧倒的に多い。オーディオ用ではなくギターアンプの保守用の真空管を購入する人ももちろん多いのだが。
 
昔と比べて、真空管アンプの自作は難しくなっているか?と聞かれたなら、間違いなく昔よりもやりやすい。インターネットの普及で、回路や製作技術の情報を得やすくなったし、製作のための部品の調達も、通販の発達により昔より簡単になったから。おまけに、わからない事があったら質問すると丁寧に教えてくれるような掲示板まである。
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最初は、誰でもわからないことだらけ。しかし、わからなくて尻込みするのではなく、飛び込んで欲しい。
 
真空管アンプの素      木村 哲
情熱の真空管アンプ    木村 哲
はじめての真空管アンプ  黒川達夫
 
これらの書籍は、真空管アンプ自作初心者の人達にお勧めの良著だと思う。

春日無線さんに、電源トランスを特注しました。仕上がりまで10日ほどかかるらしい。
ショートリング、磁気シールドを付けてもらい、¥14740 (送料¥950)となりました。
 
あと、クラシック・コンポーネンツさんで、SIEMENS ブランドのPCL-86(14GW8)という真空管が@¥700で売られていたので10本購入。
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おそらく、このPCL86はSIEMENSブランドだが、原産国はユーゴスラビアでEI製だろう。バルクで箱が無かったので、違う箱に入れてSEIMENS PCL86のシールを自分で作って貼った。元は5687が入っていた空箱だ。

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これが、差動でない普通のA級プッシュプルEp250V、50mAでのZpp5KΩのロードライン。250V/0mAから5Kx1/4=1.25Kの線を引けばよい。
 
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差動の場合には、Zpp/2の傾きで、動作点250V/50mAを通る線を引けばよい。ここで、5K、8K、10Kでのラインを引いてみた。設計した出力段では、差動で動作し直流は一ユニットあたり50mA一定なので、両ユニットで交流は0-100mAの間の範囲でしか変化しない。ゆえに、100mAのところに横線を引いた。おのおの太い線で書いた三角形の大きさを見れば、8Kが一番大きい事がわかるだろう。
 
Zpp8KΩにおける
最大出力=IpxIpXRL/2000=50x50x8/2000=10W
 
Zpp5KΩでは
最大出力=50x50x5/2000=6.25W
 
ネットで6080全段差動アンプの作例では、負荷を5KΩで製作しているものがほとんどであるが、これらのことから、250V/50mAの動作をさせるのであれば、Zpp5KΩの春日KA-5-66Pの二次側をごまかして8KΩで使用する方が良いとの結論である。実機を完成させたら、二次側の5Ωと8Ωのタップを換えて8Ωのダミー抵抗を接続し、実際に計算どおりの出力に近似するか確認してみるつもりである。
 
 

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