2017年08月

今迄のレビューは、ハーフコンポサイズのCDプレーヤー ONKYO C705FX2   8cmフルレンジスピーカー FOSTEX FE83nを繋いでのものでした。

今回は、アルテック/ウーレイの38cm2ウェイという大型のスピーカーで、本格的なアナログプレーヤー、フォノイコライザーを繋いでどんな音質なのか試してみました。
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カートリッジ:Audio-technica AT-F7(MC型)です。ヘッドシェル:Technics純正
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アナログプレーヤー:Technics SL-1200GAE
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フォノイコライザー:Luxman E-250
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このアンプは自作の’50シングルアンプで、出力は約3WとTU-8150とそれほど変わりません。比較用として用いました。イメージ 5

CDプレーヤーはLuxman  D500X's2ですが、アナログレコードとの比較に用いました。イメージ 6

エレキットTU-8150は、デスクトップなど至近距離で、小型スピーカーをドライブするのを前提にしていると思いますので、このような大型でかさばる機器に繋ぐケースは稀だとは思いますが、物は試しとばかりにやってみました。

アルテック604は能率が100dB以上あって、小出力の真空管アンプでも上手く鳴らすことが出来るスピーカーです。能率が高いので、S/Nの悪いアンプだとノイズが気になってしまうのですが、TU-8150ではハムなど全く出ません。非常に静寂なアンプです。三極管接続の状態でカーペンターズなどを聴きますと、女性ヴォーカルはかなり上手く鳴ります。ただし、ベースやドラムはちょっと貧弱な音質で、自作の’50シングルアンプとはかなり差がありました。これは真空管の違いや回路の違いよりも、TU-8150では搭載されている出力トランスが小さいために低音は諦めざるを得ないのでしょう。小型のスピーカーならわかりにくいのですが、大型のスピーカーではかなり厳しいです。それでも、アナログレコードならではの雰囲気ある音質は聴き取れましたし、女性ボーカルやストリングスはかなり綺麗に鳴らしました。Luxman D500X's2によるCD再生では、 ONKYO C705FX2に繋いだのよりはずっと高品位な音で鳴らしてくれますので、メインのアンプの隣にサブで置いて、繋ぎ変えて聴くのはアリです。

今回、アナログレコードを聴いてみたのは、現在、値段が安くてしかもフォノイコライザーが内蔵されたお手軽なアナログプレーヤーが販売されているので、そういったレコードプレーヤーとTU-8150を直接繋いでアナログレコードを楽しむ事が出来るので、参考になるのではないかと思ったからです。実際にそういう使い方をしてもTU-8150は充分に楽しめると思います。




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TU-8150に、STC 6V6Gを挿してみました。英国STC社(Standard Telephones and Cables Ltd.)は、英国における公共通信部門とそれに関連する真空管製造をほぼ独占していた企業です。なので、STC社の製造した真空管はほとんどが業務用で、本来、一般に出回る民生用ではありませんでした。米国のWestern Electoric社と業務提携し、Western Electoric社の開発した真空管に相当する品種を英国で製造していました。例えば、WE300Bは、STC4300Aという名前でした。STC4300Bという真空管もありますが、こちらは1970年代に日本の商社がSTCにSTC4300Aの復刻版を造らせたものなので、実際に業務用で使われたものではありません。

このSTC 6V6Gも業務用です。 右はアダプターを付けた状態のSYLVANIA 7C5です。
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6V6は、1937年頃に米国で開発されました。効率の良い特性と音質の良さから、ラジオや電蓄の出力管に使われて普及したのですが、最初のものはメタル管でした。次いでG管と呼ばれるダルマ型のものになり、更に直管型のGT管に変遷していきます。STC 6V6Gは、GT管になる前の古いタイプのものです。でも、特性は6V6ですからTU-8150にも、そのまま挿して使えるわけです。尚、TU-8150は、6V6を使用する条件としては非常に軽い動作なので、STC 6V6Gの様な、ちょっと高価で貴重な真空管も安心して挿して使えます。

さて、その音質ですが、OPアンプにOPA2604APを使い、三極管接続で聴いてみました。非常に上品で余韻が綺麗な音質です。解像度はSYLVANIA 7C5の方が上でしょうが、女性ヴォーカルやヴァイオリンなどの弦楽器の音は、しなやかで美しいのが好印象で、やっぱり英国の真空管だなと感じました。

STC6V6Gは、現在、秋葉原でペアで¥15000位。SYLVANIA 7C5は、ペア¥2200~¥4000位で、コストパフォーマンスを考えると、やっぱり通常使用はSYLVANIA 7C5になると思います。SYLVANIA 7C5の解像度の高い音も癖がなく良い感じなので、好みなのです。

TU-8150のおかげで、6V6や7C5の良さを再認識しました。もっと大型の6L6、6L6GCやEL34/6CA7、KT66、KT88など、傍熱型の真空管にも名管と呼ばれる真空管は多いですが、6V6族も音の良い真空管なんだなと。

本日はこのへんで失礼します。



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TU-8150にそのまま入れ替えて使える2回路入りのOPアンプは沢山あり、秋月電子で@¥25のJRC4580DからMUSES01(NJM5720)の@¥3500のまで多種多様ですが、様々なネットでのレビューを見て、取り敢えず@¥450で比較的手頃なOPA2604APを手に入れたのです。早速デフォルトのJRC4580Dと交換してみました。赤の→の部分のICをソケットから外して入れ替えるだけ。

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こんな小さいチップに2回路のアンプが組み込まれています。通販では送料と代引手数理料がかかり、全部で¥1250でした。

入れ替えてみると、音の艶や潤いが増していて音がしなやかではっきりします。OPA2604APに入れ替えたのは正解。自分好みの音に近づきました。ただし、JRC4580Dがとても安価な割に良いOPアンプで、ローコストなオーディオ機器に良く使われる理由も判りました。

今日はこれで失礼します。

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TU-8150に、ロクタルソケットからオクタルソケットへの変換アダプターを使って米国 SYLVANIA製 7C5を挿してみた写真です。

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7C5と付属してきたGE JAN6005Wを並べてみました。手持ちの7C5は、ソケットベースより上の部分は、ある時期のSYLVANIA製6V6と電極構造が同一です。SYLVANIA製に限らず、米国ないし西ヨーロッパで真空管全盛期に製造されたNOS球の6V6は非常に高価になりました。しかし、SYLVANIA製7C5は、秋葉原で、まだ@¥1000~¥2000程度で売られていて、スロバキアJJ6V6Sやロシア製エレクトロハーモニクス6V6GTよりもむしろ安価です。ソケット足がオクタル(US、GT)でないから、そのまま使用できない事が理由です。

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ソケット足の構造はこの様になっています。ロクタルベースで、ロクタルソケットが適合します。実は、このロクタルソケットというのは、車載用途、航空機搭載用途で、振動やGなどの力がかかってもソケットから緩んだり抜けたりしないようにセンターピンでロックされるような構造になっています。トランジスターの機器が普及する前の1940年代から1950年代の米国の自動車や航空機などにラジオや無線機などに使われたものです。日本では、GT管からいきなりMT管になってしまい、ロクタル管は製造されなかったのであまり馴染みはないかも知れませんが、7C5は6V6とヒーター規格も含めて全く同じ特性です。何故、ヒーターが6.3Vなのに7C5なのかというのは、唯一の規格の違いとして、車、あるいは航空機のバッテリーがフルチャージされた時、ヒーター電圧が7V位にまで高くなってしまう事がありますが、7Vのヒーター電圧供給に耐えられるようになっているからで、正規のヒーター電圧は6.3Vで、6V6と全く同じです。尚、SYLVANIAという真空管メーカーは1980年代初め頃にPHILIPSに買収され、PHILIPS ECGになりました。

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これが、ロクタルソケットからオクタルソケットへの変換アダプターです。
秋葉原のクラシックコンポーネンツ http://userweb.pep.ne.jp/classic/ に在庫があります。@\1200でした。ネットの価格表には載っていませんので、メールか電話で問い合わせれば、通販でも対応してもらえると思います。

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アダプターを挿すとこんな感じになります。手持ちのSYLVANIA7C5は、10年くらい前に10本¥4000で売られていたのを20本まとめて買ったものです。だから@¥400だったという事になります。それが、TU-8150のレビューモニターになることで漸く日の目を見ることになりました。それにしても、真空管本体がソケットベースより安いなんて。笑っちゃいます。

当時購入したお店 アポロ電子http://apollodenshi.o.oo7.jp/ では、今日現在、7C5をペアで¥2200で販売しています。私の手持ちのと同じ物だと思います。現在の現行生産の6V6の価格を考えても、安くてお買い得なのではないでしょうか。

TU-8150に挿してみた音質的レビューを書いてみます。多極管接続、UL接続、三極管接続に繋ぎ変えて共通するのは6AQ5/6005Wの時よりも、音の輪郭がはっきりし、音が全帯域で明確な感じになる事です。多極管接続の歯切れの良さ、UL接続のバランスが良くややスパイシーな音質も魅力がありますが、好みはやはり三極管接続です。しなやかでほんのり潤いがあり、ボーカル帯域がはっきりしボーカルが前に出て来ます。チェロの音色も綺麗です。音が全体的にしっかり明確になるので、同じ三極管接続でも6AQ5に戻すとやや線が細くややひ弱な感じがしてしまいます。7C5は手持ちに20本も有る事だし、私はこの組み合わせを常用しようと考えています。

では、今日はこれで失礼します。

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TU-8150に付属してきた米国GE製JAN 6005Wから国産松下電器産業製6AQ5に差し替えてみました。
三極管接続で、CDプレーヤー ONKYO C-705FX2、スピーカー FOSTEX FE83nで聴き比べてみました。

デフォルトの米国GE製JAN 6005Wのままで、ジャンパー線を繋ぎ変えて多極管接続、UL接続、三極管接続と変更してみると、出力が小さくなるが、三極管接続が一番好ましく感じられます。一番しっとり感がある、歪の少なさ(賑やかな感じが一番少ない)、低域の解像度が高い、全体的に癖が無く高品位です。私自身がそういう音が好みだという事もあるかも知れません。クラシックやジャズ、女性ヴォーカルを中心に聴いているという音楽的な嗜好もあるでしょう。もし、全く異なる音楽を好んだり、使っているスピーカーや視聴環境が違ったなら、いや多極管接続が良いよ、UL接続が好みだ、となるかも知れません。それは各人の好みの範疇です。ジャンパー線の繋ぎ変えで簡単に変更できるのですから、いろいろ試すべきだと思います。多極管接続だとやや派手目で歯切れの良い音質傾向になるし、ULだとそれが減退するもののややカッチリした感じがあります。それぞれ、それが決して悪い音というわけではありませんし。

左が松下(ナショナル)6AQ5、右が付属してきたGE製JAN 6005W
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写真ではわかりにくいかも知れませんが、GE製JAN 6005Wの方が、造りがガッチリした感じで、さすが軍用の高信頼管だな、という感じがします。

三極管接続での両者の音の違いは、松下6AQ5の方は少し音色が淡白な感じですが、しなやかさでやや勝ります。GE製JAN 6005Wはややスパイシーで濃い音色で鳴ります。和食のすまし汁と、洋食のオニオンスープの違いみたいです。ですが差はわずかで、どちらも6AQ5の音の範疇です。私的には、GE製JAN 6005Wの方が良いなという感じがしました。

TU-8150での6AQ5の動作状況は、プレート電圧約220V、バイアス-16V位でプレート損失は7Wちょっとくらいでしょうか。最大定格よりもかなり軽い動作です。最大定格は、プレート電圧275V、プレート損失12Wですが、実は、6AQ5は管が細いために放熱効率が良くないので、最大定格で使うと寿命が極端に短いのです。長期安定動作させるためには、プレート損失をせいぜい7~8Wまでに抑えるべきなのですが、それはこのキットでもしっかりと配慮されています。この状態で6V6ならばかなりの余裕なので、相当な長寿命が期待できますね。

自作で6V6や6AQ5のシングルアンプを制作するのに大事になるのが出力トランスの選定です。6V6や6AQ5は、純三極管の2A3や300Bよりもかなり内部抵抗が高いので、インダクタンスの小さい、巻数の少ない高域特性重視の出力トランスを選択すると低音が出にくい高域寄りのバランスの音のアンプになってしまいます。だから出力トランス選びにはその点、気を使うべきなのです。TU-8150搭載の出力トランスは、小さいので出力容量(無飽和最大出力)は少ないでしょうが、低域もそれなりに出てバランスは良いので、インダクタンスは充分にあるトランスなのでしょう。

では今日は、このへんで失礼します。

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