カテゴリ: PX25

このアンプを制作してから、様々な真空管アンプのマニアの方達から、「なぜ前段管がアメリカの球なんだ、前段管も英国球にしろよ。」という意見をうかがっていた。ごもっとも。今になって入手が困難なCV569/ECC35を手に入れる事が出来たので、ソケットをロクタルからオクタル(US)に交換してみました。回路定数はそのままです。
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見た目はこんな感じであまり変わりない。ロクタル管の7F7はオクタルの6SL7と同じ特性でμ70。CV569/ECC35は6SL7と同じピン接続でμ68。全く同じ特性では無いが、事実上、6SL7とCV569/ECC35は差し替えが可能です。ただし、私のPX25シングルアンプは7F7だったので、ソケットを替えなくてはいけなかった。

回路定数やCRパーツは変更がないが音質はかなり変化した。中低域がよりしっかりし、英国的ヨーロッパ的なしなやかさ美しさは磨きがかかった。7F7が決して悪かったというわけでは無いです。音のテイストとして異分子のような感じだったというのが、今回変更でよく判りました。

CV569/ECC35            SYLVANIA 6SL7                  SYLVANIA 7F7
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このように、CV569/ECC35と6SL7はピンはオクタルで同じ。ピン接続も同じ。7F7は特性は6SL7と同じだがピンがロクタルで異なっている。ロクタル管は車載用、航空機搭載用の真空管で、センターにロックピンが付いていて振動によってソケットから真空管が緩んだり外れたりしないような構造になっていた。10年前の時点では、7F7は1本あたり千円以下で入手出来て6SL7の半分以下の値段だったのに加え、アルミ色の袴がカッコ良かったので採用した。

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ソケットに挿して立ててみた写真。6SL7と7F7はほぼ同じ時期に製造されたSYLVANIA製のものだが、電極構造やマイカの形は見分けが付かないくらいに似ている。つまり、この2本の真空管は袴とピンが違うだけで上の部分は共通のようだ。実際、ソケットをオクタルに交換したPX25シングルアンプにSYLVANIA 6SL7 を挿すと、7F7が挿さっていた時と音質がほぼ同じで区別が付かない。それがCV569/ECC35 に交換されるとしなやかでヨーロッパ的な品性の良い音質に変貌する。特性の違いは僅かだが、電極の構造の違い、材質の違い、お国柄の違いなど原因はわからない。

ユーチューブで真空管アンプを検索して順番に見ていったら、私のPX25アンプと手持ちの9本のPX25を引用した動画を見つけました。使用機器が凄いです。CDプレーヤーはPhilips LHH2000、SMEのラインアンプ?も映っている。そしてPX25アンプは、ラックスのトランスを使い、おそらく+B電源は定電圧電源になったもので、とても凝っている。前段はEF37各1本でシンプル。いやはや、参りました。
 

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PX25シングルアンプを様々な音源で聴きこむうちに気になることが出てきました。割と古めの音源は凄く良いのですが、新しい録音だと、高域ののびや音のキレが鈍いのです。
 
出力トランスが、おそらく1960年代に製造された古物ということもありますが、考えられる原因は様々あります。前段の電源部のオイルフィルムコンデンサのSHIZUKI SHPは、300Bプッシュプルアンプでも使用し、やや音が鈍いので、600V 0.22uF WIMA MKPをパラって音をスッキリさせました。その経験があったので、このアンプでも、600V 0.22uF WIMA MKPを付けました。
 
さらに、カップリングコンデンサのSPRAGUE VITAMIN Q 1000V/0.47uFをASC X363 400V/0.47uFに交換してしまいました。実勢価格で1/4のコンデンサに換えたから、グレードがダウンしたということはありません。濃密な中域は減退し、独特の濃い倍音を持ったヴァイオリンやピアノの高音の響きは無くなりましたが、ASCの方が高域がスッキリ伸びて自然な音に聴こえます。PX25の品性の良さをスポイルすることもありません。回路のCR部品の定数が同じであっても、シンプルな無帰還シングルアンプは、部品のキャラクターが再生音にもろ、反映されます。
 
必ずしも高い部品が良い部品ではないという今回の例です。安い部品の方が良い音に聴こえるのだから、私の耳も安物なのかな?
 
先日アップしました整流管のAZ50とCV1264の音質ですが、挿し換えると違いはあります。AZ50の方が肌理が細かく高域が伸びます。では、CV1264の音質は良くないのかというとそうではなくて、音にクリーミーなしなやかさやおだやかな美しさを求めるのなら、CV1264の方が良いと思います。私のこのアンプは、もともと高域の伸びがもっと欲しいなというバランスで鳴っていますので、AZ50のままで良いという結果になりました。

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左が、現在PX25シングルステレオアンプに挿してあるものと同じAZ50。右は手に入れたばかりのCV1264。
ネットで規格を調べると、ピンソケット配置は同一で特性も類似しています。唯一異なるのが、フィラメントの規格。
AZ50      4V  3A
CV1264    4V 3.4A
電源トランスの容量が3AだとCV1264を挿すことはできないが、その点だけクリアできればそのまま挿し換えできます。
 
WE274Bや5U4G、5U4GB、5AR4/GZ34などの5V/2~3AのUSソケットの整流管は、市販のオーディオアンプ、ギターアンプで採用されているものが多く、整流管は出力管以上に消耗が早く、残っているNOS球はもはやそれほど多くないですし、その保守用などの需要があるから高価になりました。しかし、AZ50やCV1264は、ソケットがUFである上、ヒーター電圧が4Vと異なっているので、自作アンプなどマニアしか使わないでしょう。残っている球数は少ないはずですが、有り難いことに需要が多くないので物が出てくればそんなに法外な値段ではないのです。
 
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どちらも、フィラメントは竿釣りだけれども、AZ50は板状のプレートなのに対し、CV1264は楕円型に成型したプレート。CV1264は、今夜、アンプに挿して音質がどのように変わるか聴いてみようと思います。

PX25シングルアンプを作ろうと思い立ったのは、自宅のリスニングルームで、様々な真空管アンプを使い、ウエストミンスターなどのTANNOYのスピーカーを鳴らすミニ試聴会をしたときです。
 
そのときには自分のアンプだけでなく、他の参加された方がアンプを持ち寄ってくださって、様々な真空管アンプを聴く機会に恵まれました。その中で特に印象に残ったのが、最大出力たった2WのPX4シングルアンプと、俎板に組んだようなPX25のシングルアンプでした。どちらも気品があり、弦楽器をしっとりと美しく鳴らしました。また、女性ヴォーカルの品性のある美しさが、いつまでも記憶に残りました。ヨーロッパの古典直熱三極菅は素晴らしい。いつかはPX4あるいはPX25のシングルアンプを製作せずにはいられない、と思ったものでした。そして、このときからPX25のアンプの部品集めが始まったのです。それから10年近くが過ぎ、やっとそのときの思いが実現しました。
 
正直なところ、まだエージングが充分ではありません。オイルコンデンサのエージングは100時間程度かかります。エージングが完了したときには、もっとしなやかで伸びやかな音になるでしょう。それでも、コーガン/コンドラシン フィルハーモニア管によるブラームスのヴァイオリン協奏曲を聴くと、コーガンのヴァイオリンが凛として美しく魅力的に鳴ります。この演奏が我が家でこれほどまでに魅力的に鳴ったことはありませんでした。
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PX25シングルアンプは、昔のジャズの女性ヴォーカルでも威力を発揮します。サラの声は少し湿り気を帯びて色気があります。300Bや2A3とは明らかに世界が異なります。
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録音をありのままに出すのではなく脚色があるわけですが、これは抗しきれない魅力です。出力トランスのPEERLESS S-255-S旧型は、タンゴのXE-20Sのように透明感やキレのある音ではありませんし、やや帯域が狭い感じがしますが、音の濃さや隈取の良さや躍動感があり、これはこれで魅力があるトランスで、PX25の良さをひきだしているように思います。

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